愛に生きるライオン

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映画「おおかみこどもの雨と雪」を観てきました

どうも、愛に生きるライオン(@Lioven)です。この週末、映画「おおかみこどもの雨と雪」を観てきました。「時をかける少女」、「サマーウォーズ」などの長編映画でお馴染みの細田守監督作品です。本当にいい映画でした。

感想

一言で言えば、この映画は心暖まる13年間に渡る家族の物語です。因に、つい気になってしまう"「おおかみおとこ」や「おおかみこども」という存在がなんなのか"ということについての説明は一切ありません。それはこの物語が母と子の成長を主体として描かれているからだと思います。CMを観た第一印象は、そこまで面白そうとも思いませんでしが、細田監督作品は好きなので、実際観ると「面白いんだろうな」とは思いました。

そして観賞後の感想は、最初にも書いたとおり凄く良い映画だと思いました。僕ら夫婦が観に行った映画館に観にきていた客層は、若いカップルや夫婦の他に、映画のポスターに描かれた「雨」や「雪」のような年齢の子供を連れたお母さんが多かったのが印象的でした。でも映画のストーリー的には、前作『サマーウォーズ』のように派手なアクションがあるわけでも無く、世界を巻き込む事件が起きるわけでもありません。

全く子供向けではない作りなので、子供は飽きるだろうなぁと思いましたが、最後までぐずったりする子はいませんでした。

好きなとことろ

世界設定が素晴らしい。ファンタジックな非日常の世界なのに日常的。本当なら存在しないはずの「おおかみおとこ」とそのこども達を、存在するのではないかと思わせてくれるほどの説得力のある描写の数々は流石の一言。数え上げたらキリがないディティールの細かさは、観るものを違和感なくファンタジーの世界へと引き込む。そうかと思えば、それに真っ向から逆らうように影もなく二次元的に描かれるキャラクターたち。

これが何を意味するのか、僕には断言できるほどわかることはありませんが、意図的であるということは分かる(貞本義行を起用する理由が少し分かった気がした)。あえてその理由を予想してみるなら、"ディティールを追求した作品(人間性や物語性)で勝負したいたい"からこそ、作画での説得力に頼らないようにしているんだと思う。個人的に貞本義行さんのキャラクターには良い意味で個性が無い(レゴブロックの人形のようなイメージ)と思っているので、アニメ映画向きだなーと思っています(この映画のポスターでは、作中と違い影のあるリアルな書き込みになっている)。

その他にも、細田監督の演出には唸らさせるシーンが多く「綺麗にまとまったアニメだなー」と没頭することができました。…トイレに行きたくなるまでは。そんないろいろな要素をひっくるめて「おおかみこどもの雨と雪」はいい映画だったと思います。きっとこれからの人生において、何度も観ることになる作品でしょう。子供が出来てから観ると、また違った発見があるかもしれません。

きになるところ

この映画は、言うなれば主人公「花」の母としての成長物語と言えます(子供の成長記でもありますが)。「おおかみおとこ」恋に落ち。ふたりの「おおかみこども」を授かり。さまざまな困難を乗り越えながら、世間から身を隠して子供を守り育てる。そして「花」の望んだ通り、子供達は見事自分達の道を見つけます。素晴らしい人生です。

ですが、この物語の難点があるとするなら、それは何事にも屈しない「花」のタフさです。ただでさえ困難だらけであろうシングルマザーとして二人の子供を育てるだけでなく、その子供たちは病院にも行かせられない「おおかみこども」。そんな子供たちを育てながらも弱音を吐かない。自らは助けを求めない。「辛い時も花のように笑っていれば大丈夫」。そんな意味を込めて名付けたという父親の願いを見事貫き通し、本音を押し殺して一生懸命生きぬいている。そう思えば納得もできるかもしれません。

それにしてもここまで自己犠牲の精神で、尚且つ人を拒絶して生きていけるものでしょうか。「花」は偶像的過ぎる気がするのです。僕の妻も言っていましたが、劇中において「こどもを叱るシーン」がほぼ無いのです。我儘を言う子供にだって優しく諭す事しかしない。これも笑顔を絶やさない為の「花」のポリシーであり、子供を尊重した教育だと捉えられはしますが、何だか少し人間味を欠いているような気がする。

これを母親の成長記として捉えても、結局最初から完成された母親だったように思えるので不自然だ。これは細田守監督の「理想の母親像」。男の思う「強い母親像」なんじゃないかと思う。

おわりに

僕ら夫婦にはまだ子供はいません。でも僕ら二人とも子供が好きなので、こういう映画には特に弱い。単純に親子愛に感動するだけではなく、改めて考えさせられる事がたくさんある。そしてこういう映画を観終わった後は、決まって二人の将来の話や子育ての話、お互いの価値観について等たくさん話し合う。妻はこの映画を観て「尚更子育てをする自信がなくなった」と言いました。子供の為に全てを投げ打って、子供の為とあらば田舎へ引越し、やったこともない畑仕事だってする。そして誰にも頼らない。妻はそんな「花」に圧倒され「自分はここまで子供にしてあげられるだろうか」と思ったのかもしれません。

でも僕は思うのです「母は強しと言いますが、流石にあんなにはタフな人はまずいない」と。あれは映画だから。あれはアニメだから。なんて言うのは作品に対して失礼だと思うけれど、少なくともこの作品で描かれる「花と雨と雪」という家族の13年間は、多くのお母さんとその子供達の縮図なんだと思う。上でも書いたように、それを2時間では描ききれないから、困難は「おおかみこども」であることに絞った。僕はそう受け取りました。そりゃあ僕だって「自信がある」と言いながら不安もある。僕だって父親になるには散々な状況だ。自信があるとか無いとか。最初から完璧な親なんていないとか。そんな気持ちの問題じゃない。足りないものが多すぎる。

でもこうやって妻と話し合う時間が、二人の将来を明るくしてくれると信じている。普段から良く話をする方だと思いますが、この映画を観たことが刺激になり、お互いが子育てについていつも以上に考え、深く話すことが出来ました。そんな機会が持てただけでも、この映画を観に行けてよかったと思う。

妻よ。自信を持てとは言わない。でも"何か"と自分を比べて自信を無くす必要はないよ。僕らは僕らのペースで歩いていこう。

では、また。