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Apple Musicに思うこと

7月1日にApple Musicが世界同時公開され、日本でも使えるようになった。これほど心踊るサービスはそうそうあるものじゃない。

個人的な音楽離れ

個人的なことを言うと、実は最近かなり音楽離れが進んでいた。

CDは滅多に買わないし、借りることも少ない。たまにレンタルすることがあっても、「昔MDに録音していたせいで、iTunesに移行し損なった懐メロを借りる」といったような「知っている曲を再度手に入れる」というパターンが多い。ダウンロードで曲を購入することもあるけど、新しい音楽に触れる機会そのものが少ないので、その頻度もかなり少ない。

そんな僕からしてみても、Apple Musicのスタートは心躍る大事件だった。新たな時代の幕開けだと感じた。確かにNapsterとかMusicUnlimitedなんかの「聴き放題」サービスが昔からあったのは知っている。でも利用したことたことはないし、現在最大手とされるSpotifyも利用したことがない(日本向けのサービスではないらしいし)。

日本でもAWAやLINE Musicといったサービスが始まったことも知っている。でも単純にそこまで興味をそそられないから、それぞれの曲数を比較したことすらない。僕がその他の類似サービスに興味を抱かなかったのは、単に「たくさんの曲が聴きたい」という願望があったわけではないからだ。

Apple Musicはストリーミング音楽配信サービス(名称あるのかな?)後発らしいが、そんなことはどーでもいい。いつだってAppleは後発だ。後から来て時代を切り拓くゲームチェンジャー。それがAppleやり方。そのやり方が刺激的だから、僕らはAppleが好きなんだ。

Apple Musicの魅力

実際使ってみて思うのは、Apple Musicは本当に手軽だということ。すでに手元にあるiOSバイスをいつものようにアップデートするだけで、すぐ利用し始めることができた。さらに3ヶ月無料で試せて、有料プランも日本円にしては比較的安く、家族プランもあり、オフラインでも聴けて、それが日本からも利用できる。こんなに嬉しいことはない。

Apple Musicがほかと違うと思えるのはAppleがハードメーカーであり、ソフトメーカーであり、iTunesApp Storeという強固なエコシステムをもつ最大級のプラットフォーマーでもあるからだ。だからオーディオデバイスも自前。プレーヤーアプリも自前。販売網まで全て自前だ。Apple Musicは単なる「サービス」じゃない。「Appleが持ちうるリソースを最大限に活用しているサービス」それがApple Musicなんだ。そのシームレスさたるや、自分がAppleのヘビーユーザーじゃなくとも期待せずにはいられなかっただろう。

Spotifyなどの定額のストリーミングサービスでもそうらしいのだけど、再生回数に応じてアーティストに報酬が発生する(カラオケのような?)印税方式であるのも良いと思う。良い音楽は長く聴き継がれる。そしてアーティストは継続的な報酬を得られる。何て素晴らしいんだ音楽の未来。これからはこういったモデルがデファクトスタンダードになるんだろう。もう後戻りはできやしない。そしてこれなら喜んでサービスを継続利用しようと思える。こんな考えは楽観的すぎるのだろうか?

僕はApple Musicに「新しい音楽との出会い」を求めている。音楽のストリーミングサービスが続々と登場しているところをみると、「プレイリストの共有」というユーザー同士のやりとりがこれからの音楽のあり方のひとつなんだろうと思う。それは自分以外の人の手が入ったもので、新しい音楽との出会いの入り口だ。そんな「出会い」に対するアプローチに力が入っているからこそ、Apple Musicは魅力的なんだと思う。

そしてもうひとつAppleの強みだなと思うのが、Apple Musicを使うことで「これまで溜め込んできた自分の音楽ライブラリと統合することができる」ということ。僕は今までiTunes Matchは利用してこなかったが、Apple Musicでも同じようにiCloudに自分のミュージックライブラリをアップロードして、どこからでもアクセスできるようにできる。だから「新しい音楽との出会い」以外の部分、「邦楽の物足りなさ」もほぼ気にしなくていいわけだ。だって、今までも自分のライブラリの中から曲を選んで聴いていたわけだし。

Apple Musicの気になる点

もちろん気にならない点がないわけではない。最初、ミュージックアプリの変わりようには驚いたし、何処に何があるのかわかりにくいと思った。アーティストの表記に統一性がなかったり(英語表記だったりカタカナ表記だったり)、アプリケーションが多少不安定になることもある(設定からiCloudライブラリのオンオフで多少改善した)。細かいことを挙げるときりがないが、もう慣れた。全体的な完成度が高いので、実際そこまで目くじらを立てる要素はなかったりする。不安定だなーと思う部分は、いずれアップデートで改善してくれるだろうと期待している。

終わりに

今はただ、この新しい音楽体験に身を委ねるのが心地いい。まだ「新しい音楽との出会い」を実感するほどではないけれど、すでに今までとは違った聴き方ができているし、とにかく面白い。

例えば「あの作品に使われている曲のプレイリストを作ってみよう」と思えばすぐコンピレーションプレイリストを作れるし、知っているアーティストでも「そういえばベスト盤しか知らない」ということもよくあり、その気付きを得た次の瞬間にはそのアーティストの他の曲にアクセスできる。今まで聴く機会の少なかった「食わず嫌いなジャンル」に触れることもできる。

これらの全て行動に「躊躇する理由が無い」というのがなんとも新鮮で、これがアーティストとユーザーを繋ぐ「新たな出会い」であり、それがアーティストのためになるならこんなにいいこともない。これはもう「体験のデザイン」というより、新しいミュージックカルチャーそのものだと言っても過言ではないと本気で思う。

僕はApple大好き人間だ。だからといって崇拝しているのとはちょっと違う。Appleが刺激的な企業であり続けるから、僕もAppleが好きでいられる。好きだから選ぶ。その繰り返しというだけだ。

だから、例えば我が子(現在1歳)が大きくなって、スマホを欲しがるとしよう。そこでApple製品を強要したりするつもりはないし(布教することはあるかもしれないが)、より良い他社製品が現れれば自分が乗り換えることだってあるかもしれない。

でもApple Musicの登場で、その可能性は限りなく低くなったように思う。だってそうだろう。保護者である僕の手中には、「膨大な音楽の海へのアクセス権」が既にあるのだから。