愛に生きるライオン

おもしろき世をことさらにおもしろく

映画『かぐや姫の物語』を観てきました

2013年11月27日劇場にて、映画『かぐや姫の物語』を観てきました。「かぐや姫の物語」はスタジオジブリ高畑勲監督の「竹取物語」を原作とした、凄まじいほどに美しいアニメーション映画。日本人には馴染みのある物語だが、物語の性質上海外の反響がとても気になる作品だ。「姫の犯した罪と罰」というキャッチコピーから多少変化球があるかと思っていたが、ほぼ原作通りであることに驚いた。

淡い水彩のタッチで描かれた山や川がスクリーンいっぱいに映し出される様は圧巻で、それだけでも劇場で観る価値が十分にあると思う。今はもう馴染みの少なくなってしまった青々とした草花、鳥、虫、獣。日本古来の様式美、おくゆかさをたっぷりと堪能できる。日本最古の物語と最新の技術の融合、美しい絵と音楽の調和は「極上」の一言。最早、映画と言うよりアートと言ったほうがいいくらいだ。

かぐや姫の物語」が竹取物語でないのは観れば納得。昔話では記憶にない“かぐや姫の内面の成長、心の葛藤”が描かれている。そしてかぐや姫を通して、命の尊さや生きる喜びを再認識させられる。高畑監督は、竹取物語に「生きる」というテーマを与えた。そして「『子どもたちに“この世は生きるに値するんだ”ということを伝えるのが自分たちの仕事の根幹になければならない』と言った宮崎駿監督のフレーズに通ずる部分があるなぁ」などと思っていると、ついつい親目線で観てしまい、最後は思わず泣いてしまった。

高畑監督作品には強いメッセージ性があり分かり易くて好きだが、思えば高畑作品を劇場で見るのは初てのことだ。大人になって過去の作品を観返すと、その味わい深さ、繊細さに高畑作品が更に好きになる。「かぐや姫の物語」も、この先何度も観返したいと思う、懐かしくも新しい最高のエンターテインメント作品だった。